第6回 アルバム「いい話」コンテスト グランプリ決定!
第6回「アルバム良い話コンテスト」に、たくさんのご応募をいただき、本当にありがとうございました。
今回も、多くの心を打つエピソードが集まり、本当に評価の難しいコンテストとなりました。
前回のコンテストから1年。
残念なことに新変異種の登場などコロナ禍は終息に至っておりませんが、少しずつコミュニケーションが取れる状況も増え、
今回のエピソードもそれを反映してか比較的明るい話題も増えたように思います。
また、今回全体のエピソードを拝読してアルバムのもつ人と人とを結びつけるチカラの強さに改めて驚きました。
考えてみれば、アルバムをつくることは愛情表現であり、それを読み返すということは愛情を再確認することなんだ、
という事をつくづく実感しました。
そして今回、たくさんのエピソードをお送りいただいた中で、お祖母様が残した思い出のエピソードをグランプリに選出させていただきました。
加えて、優秀賞も予定より1作品多い5作品を選出いたしました。
改めて、エピソードをご応募いただいた皆様に改めて御礼を申し上げます。
このコンテストがアルバムづくりの一助になることを願っております。
受賞・賞品に関するご案内をご登録メールアドレスにお送りしております。
ご確認いただけていない場合はお手数ですが「album-tukurou@nakabayashi.co.jp」までその旨ご連絡をお願い致します。
グランプリ
わたる さん
昨年、祖母は100歳で旅立ちました。
遺品の整理をしていると、古いアルバムが4冊出てきました。
いちばん古いのは、祖母が結婚して私の父や叔母が生まれた頃のもので、時代的にはもう80年近く前のようでした。
3冊目から、ようやく生まれた私が出てきました。私が小学生の時、電車のなかで祖母とふたりで写っている写真が1枚ありました。
それは食堂車で、私は満足気にハンバーグを食べるところでした。
思い出しました。私は小さい頃食いしん坊で、しかも新幹線で食べるのに異常なほど興味を持ち、祖母にねだってただ食堂車で食べるためだけに新幹線に乗ったのでした。
写真の横には、そのときのレシートが貼られていました。
40年経って、印字もかすれてきた、小さく何の愛想もない紙。
ただそれだけ。レシートは、経費計上の必要がなければ捨てるのが私の感覚です。
他にも祖母と写っている写真はありますが、そのなんの特徴もないただのレシートをアルバムに挟んだ、当時60歳くらいだった祖母のちょっとした気持ちが、どういうわけか私の心の弱いところへ刺さりました。
4冊目には、私の子供つまり孫の写真も出てきました。
色んな感情があふれて、どうもうまくはいえないのですが、 とにかく100歳まで生きてくれて、ありがとう。
祖母はまだ、アルバムの中でレシートと共に生きています。
<審査員コメント>
このエピソードを拝読した際、文中にもある「色んな感情があふれる」という気持ちがこちらにも伝わり、不思議な感動がありました。
きっとお祖母様にとっても、一緒に新幹線の食堂車で食事したことが、本当に特別な思い出だったのではないでしょうか。
その大切な思いを何かカタチに残そうと、本来捨ててしまってもおかしくはないレシートも一緒に挟まれたのだと思います。
現に長い時を経て、わたるさんがそれを見て、感謝の気持ちと共に思い出を振り返る切っ掛けになったとしたら、こんなに素敵な話はありません。
アルバムの整理術として、チケットやパンフレットを写真と一緒に残すという方法があります。
このエピソードから、その意味を教えていただいた様な気がします。
優秀賞
県真(あがたまこと) さん
幼い頃実家は貧しく、母は遅くまで働きに出ていた。そのため、私の学校行事には出席できず、卒業式にも一人で参加していた。母親と一緒に楽しそうに帰っていく友達の姿を羨ましく思ったものだ。
幼い私はせめて卒業式だけは出席してほしいと訴えると、母は申し訳なさそうに小さく頷き、「いつか行きたいね」と約束してくれた。
母はその後も父と共に家計を支えた。結局、小中学生、高校生の時も母は私の卒業式に出席できなかった。私もいつしか、あの時の母との約束を忘れてしまっていた。
そんな私が母の三回忌に帰省した時、遺品箱の中から小さなアルバムを見つけた。母が大切にしていたアルバムだった。
中には家族の写真が飾られていた。その中に、私の大学の卒業式に父と三人で撮った記念写真があった。
写真の真ん中には、これから社会人になる初々しい姿の私がいた。そして、私の右側には母が寄り添っていた。
傍らには、こんな言葉が記されていた。
「お前の卒業式、漸く出席出来たよ。約束果たすの、遅くなってごめんよ。」
私は、母と結んだあの約束を思い出した。改めて写真の母を見ると、その顔は本当に晴れやかで優しさに満ち溢れた素晴らしい笑顔だった。
私は、涙ながらに写真の母に語りかけた。
「母さん、あの約束、ずっと気にかけてくれていたんだね。本当にありがとう。」
私の心は母への感謝の気持ちで一杯になった。
<審査員コメント>
卒業式に参加するという約束をずっと覚えていながら、やむにやまれないご事情からずっと卒業式に参加できなかったお母さまの無念さと、大学の卒業式でようやく出席で来たという嬉しさが、アルバムに綴られらた文章から伝わりました。
もしかしたら、お母さまは長い間、参加できずに申しわけないという思いから、一言アルバムに綴られたのかもしれません。本当にご苦労をされたのだと思いますが、約束を果たされることが出来て良かったな、と目頭が熱くなりました。
優秀賞
りくママ さん
「母さん、昔の写真ある?」 受験の朝、息子がキッチンに顔を出す。
これから試験だと言うのになぜ。聞けば今朝の占いで『昔の写真』がラッキーアイテムだったらしい。
そう言われたら出さないわけにはいかない。何せはじめての受験。息子にとっては一世一代の大舞台。
私も慌てて押入れからアルバムを引っぱりだした。
「どれにしようかなあ」 息子はアルバムをめくりながら写真を眺めた。私もその様子を隣で見守った。だけど一緒に写真を眺めながら何だか懐かしい気持ちになった。
はじめての幼稚園。
はじめての自転車。
はじめてのお遊戯会。
そんな「はじめて」を見ながらあの頃をふり返った。練習では息子が泣き、本番では私が泣いたお遊戯会。息子の自転車を支えながら一緒に転んだあの日。
涙も汗もあったけど、笑顔も同じくらいあった。どの日も、どの瞬間も、宝物。
「おれ、これごと持ってくわ」 息子はアルバムごと鞄に入れた。
いろんな思い出がありすぎて選べなかったのだろう。アルバムを入れると鞄はたちまち期待で膨れた。「よし絶対合格するぞ」という息子の表情はやる気に満ちていた。
もしかしたらアルバムは『今日の』ラッキーアイテムではなく『人生の』ラッキーアイテムなのかもしれない。
きっと、うまくいくよ。
きっと、うまくいく。
試験に向かううしろ姿にそんなことを思った。
<審査員コメント>
受験を控えたお子様を見守るお母さまの心温まるエピソードです。
結局、持っていく写真を選びきれずに、アルバムごと持っていくという所に、単なるラッキーアイテムではなく、かけがえのない心の支えの様なものを感じられたのではないでしょうか。
受験は勿論ですが、今後も乗り越えなければならない壁が出た際には、アルバムが心の支えになればいいな、と思います。
優秀賞
秋谷 進 さん
児童精神科医の仕事をしている私のもとには、子育てに悩みを持つ親御さんが来ることもあります。
例えば、友だちとケンカを繰り返したり、店から物を盗んでしまったり、学校をさぼってしまったり……。
親がどんなに叱っても、もう二度としないと約束をさせても、それを破られれば、子育てに不安を覚えるのは当然です。
何を言っても言うことを聞かない、どうして言うことを聞かないのかもわからないとなってくると、いくら親であっても子どもを信じられなくなったり、子どもへの愛が揺らいだりすることもあるものです。
そういう時に私がしていることは、親御さんの話を聞くこともそうですが、聞いた後に親御さんに子どものアルバムを持ってきてもらうように伝えます。
そして、アルバムを開きながら、写真に写っている時代の子どもの話をしてもらうんです。そうすると親御さんはだんだんと気持ちが高ぶってきて、再び子育てに前向きになっていきます。
私はこの瞬間が、一番感動します。私のもとに来て下さる親御さんは、みんな本当は子どものことが大好きな人たちだから、というのもあると思います。
それでも子育てをしていれば迷いは生まれますし、愛しているからこそ嫌いになることもあります。でも愛していることを思い出せば、溢れてくる感情は一つしかないのです。アルバムは愛情を思い起こさせる、魔法の道具だと思います。
<審査員コメント>
こちらのエピソードだけでなく、今回、学校の先生や医療関係の方、子供の非行に悩まれたご両親からも同じようなエピソードを多数いただきました。
エピソード中に「愛情を思い起こさせる、魔法の道具」とありますが、家族間でもなかなかコミュニケーションが取りにくい昨今、言葉や日常生活の中では表現できない愛情を、アルバムは伝えてくれるのだ、と感じました。
我々も含め、ぜひアルバムを活用していきたいと思います。
優秀賞
高瀬 朋美さん
結婚が決まった。みんな喜んでくれた。だが、困った事が一つ。私は料理が嫌いだ。毎日、ちゃんとご飯を作れるだろうか?家族の心配事だった。
新居へ引っ越す前に、母が笑って言った。『毎日、何を食べたか、写真に撮って送ってね!』と。
私だって、やればできるはず!と答える代わりに、弁当と夕食を作って、毎日家族にスマートフォンで写真を送った。料理をサボりたくなる日もあったが、写真を送るというルーティンがあるおかげで、続けることができた。
結婚式の日。高砂に、妹がやってきた。手に小さなフォトブックを二冊持って。
一冊は『お弁当』、もう一冊は『夜ご飯』。私が送った写真をアルバムにしてくれていたのだ。中を見ると、家族からのコメント。みんなで、私、もとい新米妻の奮闘ぶりを見守ってくれていたことに気付いた。
そして余白に、母からのメッセージ。『夕ごはんもお弁当も毎日しっかり作っていて、感動しました。』 今も料理は嫌いだけど、このアルバムを開くと、私は少し自信を持てるのだ。
▲実際のお写真
<審査員コメント>
毎日のご飯の写真を送ってね、という期待とプレッシャーをかけるお母さまと、それにしっかりこたえる高瀬朋美様の心温まるエピソードです。
写真を送るというルーティンと、最後にアルバムというカタチにすることで、家族がしっかりと応援してくれていたことが分かる、デジタルとアナログの良い面が伝わりました。
毎日のご飯作りは本当に大変だったと思いますが、今後もぜひ頑張っていただけれと思います。
優秀賞
佐々木 幹雄さん
私は、家族の誰にも見せたことのないアルバム、題して『人間の根源』を隠し持っている。
被写体は全て次女。真面目一筋の長女に対し、次女は根っからの「ひょうきんもの」で、写真を撮られる際には「どうすればウケるか」をひたすら考えるタイプ。
友人達は「今年はどんなボケをかましてくれる?」と年賀状の中の次女を楽しみにしている。
プクプクの体でのテーブル上のダンス、サングラスをかけ自転車にまたがったツッパリ、エレキギターを低めにぶら下げたパンクロッカー……そうした面白写真だけを集めたのが、このアルバムだ。
さて、それをどうするのか? いつの日か次女が「彼」を連れて来て、そやつが「お嬢さんを僕に下さい」と言った際に、『人間の根源』をおもむろに出して、こう告げるのだ。
「ここには人間が生きるということの意味を根源的に問う写真作品が収められている。人は何故哲学にすがらなくてはならないのか? その答えがこのアルバムの中にあると、私は確信している。
……それでは、君がこのアルパムを最後までじっくり見て、笑わなかったら、娘をあげよう!」 もちろん、娘が選んだ相手に異議を唱えるつもりなど毛頭ない。
できることなら、そやつには大笑いしてもらいたい。 (逆に、全く笑わない奴はちょっと困る。) しかし、三十路をいくつか過ぎた次女に、「彼」を連れて来る気配は一向にない。 果たして『人間の根源』は日の目を見るのだろうか?
▲実際のお写真
<審査員コメント>
タイトルを読んで、どんなエピソードなのだろうとドキドキしました。
そして読み進めると、お父様のユーモアに思わず吹き出しました。
きっとお父様のセンスを娘様もしっかり受け継いでいられるのはないかと思います。
それにしても、「人間の根源」アルバム。ぜひアルバム1冊分、拝見してみたいです。
そして、そのアルバムを読む大切な方が現れることを願ってやみません。
テーマ:アルバムにまつわる「いい話」
アルバムをつくっていたからこそ生まれた心温まる話、感動する話、笑える話などを集め、アルバムの持つ力・良さが伝わるエピソードを募集します。
グランプリ:賞金 3万円(1名)
優秀賞:QUOカード3000円券(4名)
※「該当作品なし」となる場合があります。
テーマ | アルバムにまつわる「いい話」 |
募集要項 | アルバムをつくっていたからこそ生まれた心温まる話、感動する話、笑える話などを集め、アルバムの持つ力・良さが伝わるエピソードを選出します。 |
賞 |
グランプリ…1名(賞金3万円) 優秀賞…4名(QUOカード3000円券) ※「該当作品なし」となる場合があります。 |
応募資格 |
プロ、アマ、国籍、性別、年齢に関係なくどなたでもご応募できます。
※副賞の振込・発送は国内のみとさせていただきます |
応募点数 | 制限なし |
日程 |
募集期間:2021年11月1日(月)~12月17日(金)12:00まで 結果発表:2021年12月末頃予定 |
応募方法 |
WEB上の専用フォームから「題名」「エピソード」を投稿してください。
「題名」は最大100文字以内、「エピソード」は200~600文字程度で受付けます。 |
審査 | ナカバヤシ社員による審査 |
応募規約 |
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