世の中にはいろんなアルバムがお店に並んでいますが、「その違いはデザインだけ」とお考えの方も多いのでは?もちろんデザインもポイントですが、実は、台紙の品質にも大きな違いがあるんです。
今回は、島根県でアルバムづくりを手がける方々へのインタビュー第2弾として、松江工場で品質保証に取り組む佐藤さん、佐田工場で製造に取り組む神田さんに、「高品質な台紙のひみつ」について教えていただきました。「ここまでやる!?」アルバムの品質を維持するために、日々繰り返されている驚きの検査とは?
―ナカバヤシの工場では、何種類のフリー台紙を製造しているんでしょうか?
神田フリー台紙は、『100年台紙』『プラコート台紙』『ライト台紙』そして従来品の4種類に大別されます。その台紙がビス式、ブックタイプ、リングタイプ、バインダータイプなどの方式によって製本され、アルバムになりますので、サイズやカラーバリエーションも含めて考えれば、商品数は数百種類に及ぶのではないでしょうか。
―台紙の生産を行う上で、注意されているポイントなどはありますか?
神田台紙は紙製品ですので、保存環境によって吸湿・乾燥します。そこで、通常の保存状態ではなるべく変化が起こらないように、台紙の仕上がり水分を一定に保つことで、品質を安定させているんです。国内向けのフリー台紙については、日本の湿度に合わせて約6%の水分値に、海外向けの製品では、日本に比べて乾燥した環境が多いため約5.5%に設定しています。
その他の品質管理についても、品質管理表に定められた項目に従い、製造時にのりの塗工状態やフィルム傷の検査、印刷台紙については色の濃淡や絵柄の鮮明さなどの品質維持に努めています。こうして工場で製造された台紙は、検査機器が充実した松江工場内の品質保証室にて、さらに厳格な品質管理チェックを受けることになります。
―それぞれの台紙について、どのように検査を行っているのですか?
佐藤品質保証室では、アルバムの台紙はもちろんノートや手帳の用紙に至るまで、紙製品全般についてテストを行っています。試験項目にはさまざまなものがありますが、台紙について言えば水分値の測定や粘着力試験、その他官能試験など7項目の試験があります。官能試験というのは、人の感覚による検査です。たとえば「フィルムを剥がしやすいか」という剥離感ひとつとっても、「2回以上剥離したとき」「急速に剥離したとき」「下からではなく上から剥離したとき」といったように、きめ細かくテストしていきます。最近では、「剥がすときの音が気になる」というお客様の声を受けて、「剥離音」についても検査を行っています。気温が低いと、パリパリという音がすることがあるんです。こうした声にひとつひとつお応えしていくことが、お客様からの信頼につながっていくのだと考えています。
―その他にはどのような検査を行っているのですか?
佐藤検査項目は減るものの、時間の経過によって粘着力などが落ちていないかチェックするために、生産10日後、40日後、70日後にも同じロットの台紙に対して検査を行っています。さらにいえば、台紙になる前の原紙についても、水分値や吸水度、湿潤伸度といった14の項目について定期的に検査を行っています。原紙メーカーサイドでも検査は行われているのですが、当社でもあらためてチェックを行っています。もちろん、新商品を発売する際には、さらに詳細な検査を行っていますよ。
―ナカバヤシの台紙品質について、自信があるポイントは?
佐藤昭和43年からフリー台紙を製造・販売してきて、約半世紀になります。その間に蓄積されたさまざまな技術やノウハウによって、『100年台紙』や『プラコート台紙』などの高品質な製品が生まれました。ぜひ一度お使いいただいて、品質の良さを感じていただければ幸いです。もちろん、本質的な価値は長期間使用したときに実感していただけるものと思いますが、「写真を貼ってフィルムを戻すときの空気の抜けやすさ」といった、使い勝手の良さも私たちが追求しているポイントですので、ぜひお試しください。
―台紙に挟んだ写真をより長持ちさせるための方法や、適した環境はありますか?
佐藤四季がある日本では温度・湿度が変化しやすいので、できるだけ温度や湿度が高くない環境に保管していただくのが良いと思います。見落とされがちですが、「部屋の奥に置いていたけど、日差しが差し込む時間帯があって変色してしまった」という例もありますので、直射日光にもご注意いただきたいですね。あとは、写真を貼る際に周囲10mmの余白を設けてフィルムと台紙をしっかりと密着させていただくと、写真がよりしっかりと固定され、空気の侵入を防ぎます。
―これから『ナカバヤシ製の台紙』を使用されるお客様へのメッセージをお願いします。
佐藤最近では、写真の保存方法もさまざまです。ただ、災害が起こったときに古いアルバムが回収されるということもあります。写真、そしてアルバムという形になっているからこそ、先の世代まで引き継いでいけるのだと思います。ぜひみなさんも、形に残してみてください。
―佐藤さんにとってのアルバムを、ひとことで言うと?
佐藤ナカバヤシのコーポレートメッセージは「思いを守る、明日へつなぐ」ですが、まさにアルバムを表している言葉だと思います。私の家にも5代前の明治時代の写真があるのですが、自分の先祖が当時どこでどう暮らしていたのかがよくわかります。同じ世代の横のつながりだけでなく、先祖や子孫といった縦のつながりも、見落とされがちですが大切なことではないでしょうか。何十年先の未来へと写真をつないでいけるのは、やはりアルバムだと思います。
1986年ナカバヤシ(現 島根ナカバヤシ) 入社。佐田工場で、表紙・台紙の製造・開発に約30年携わる。台紙のスペシャリストで、100年台紙はもとよりライト台紙・プラコート台紙・印刷台紙・輸出台紙にも精通している。趣味は釣りで、休日は魚を求めて海へ川へと出かける。釣り好きが高じて、娘に魚の名前を付けてしまうほど。また、近隣の小学校のバレーボールチームの指導も行っている。
1986年ナカバヤシ(現 島根ナカバヤシ) 入社。佐田工場でアルバムの品質管理に携わる。2007年、品質保証室が設立されると同時に配属(出雲工場)。製品評価、材料調査、クレーム対応などの業務に携わり、ISO9001(品質マネジメントシステム)の管理責任者を務める。品質保証室の移動に伴い、2014年より松江工場で勤務。