卒業アルバムは生涯持ち続ける大切な宝物のひとつ。 それを校長先生が手づくりしている学校があると聞き、お話を伺ってきました。 「子どもたちが何度でも見返す様なアルバムをつくりたい」と語る佐藤校長先生にアルバムづくりへの想いをお聞きします。
― まず、河内小学校のことと先生のお仕事を教えてください
私が勤める河内小学校は、北九州国定公園内の河内貯水池のほとりに建ち、野鳥や野草が多く生息する自然に囲まれた児童数20名の小規模校です。
授業の一環に農業体験や自然体験を取り入れ、米づくりや野菜づくりも行っています。
「のびのびフレンドリースクール(小規模特別転入学制度)」として、地元以外の子どもたちも受け入れる体制を取っています。
今年で142年目を迎える本校では、長い歴史と地域の伝統を大切にし、小規模校の良さを活かしながら、
全職員一丸となって、信頼のおける学校を目指しています。
校長と聞くと、校長室でどっしり構えているイメージがあるかもしれませんが、私は毎朝玄関前に立ち、児童とあいさつと握手を交わします。
パソコンでの事務作業も行いますが、よく校内を歩き回り、昼休みは校庭で児童たちとサッカーやバスケットボールなどに興じます。
地元の方ともお話をしたり、合間に書類や資料の作成、学校行事のプランを考えたりと、目まぐるしい日々です。
― 卒業アルバムをつくりはじめたきっかけは?
私が赴任する前から、河内小学校では校長が卒業アルバムを手づくりしていましたので、必然的に引き継ぐ形になりました。
アルバムづくりはプライベートでも関わったことがなかったので、はじめは「困ったな~、できるかな~」という不安がよぎりました。
しかし、いざつくり出すと「児童たちは、こんなシーンでこんな表情を浮かべるんだ」「このアルバムを渡したら、どんな顔で喜んでくれるだろうか」など、
面白さに気が付き、楽しくつくり上げることができました。
今は「今年の卒業生のアルバムはどんなふうにつくろうか」と、いろいろ想像と妄想をふくらませています。
― 構成や制作方法について教えてください。
アルバムは一冊の本と考え、まずは構成を考える所からはじめます。物語のように起承転結をイメージします。
そして、学校行事の写真を時系列に並べることによって、よりリアルに思い出が浮かんでくると思っています。
眺めながら小学校生活を思い返して欲しいですね。
我が校は自然に囲まれた環境にあるので、四季の写真もふんだんに散りばめました。
最大のポイントは写真のセレクトではないでしょうか。
アルバムづくりに携わる以前は、背景や周囲のものもしっかり入るように遠目に写していました。
しかし、卒業アルバムは児童が主役だと気が付き、表情や動きを撮影する様になりました。
学校行事の度に「先生、近づき過ぎ~」と言われるほど児童に近づき、思い切りズームで撮影することを心がけましたね。
また、とにかく枚数を撮るようにしました。
素人カメラマンの私でも、多く撮れば良い表情が必ず撮れているものです。
デジカメなら後でいくらでも消去できますからね。どの行事もパシャパシャと撮りまくります。
アルバム自体の制作期間は約2か月。
パソコンのオフィスソフトを使って写真と文字をレイアウトしていきます。
ある程度の行事が終わらないと素材も揃わないので、12月にアルバム制作に着手し、2月までにつくり終え、3月の卒業式に卒業生に渡しました。
― アルバムを受け取った児童たちや保護者の感想はどうでしたか?
児童たちは受取ってすぐに表紙を開いて、歓声をあげていました。
さらに、私が手づくりしていると知って、びっくりしていましたね。
「涙が出そうにうれしい」「辛いことがあったときに眺めたら、元気になるかも」など、妙に大人っぽい感想を言ってくれる児童もいて驚きました。
これから中学校高校と進んでいく中で、河内小学校で学んだことや経験を忘れない様に、ときどき見返して欲しいですね。
保護者の方々からは「初めてのアルバムづくり、大変だったでしょう」と労いの言葉を頂きました。
多分お子さんのアルバムづくりなどをされて、苦労がお分かりなのでしょうね。
「学校での様子がよく分かります」「ここまでつくり込んでいただいて感謝します」という言葉に感無量でした。
私が思うに、プロのカメラマンではなく、普段から児童と接している私だからこそ撮影できた表情もあるのかなと。
保護者の方々は学校でのこどもたちの様子を特に気にされています。
行事や授業参観などで目にする機会はありますが、アルバムとして手に取って見る感動があったのではないでしょうか。
― 今後の卒業アルバムへの意気込みを教えてください。
卒業生が何度も何度も見返してくれるアルバムをつくりたいですね。
そして、この小学校のことを思い出してふらりと訪ねてきてくれるようなきっかけになる一冊にしたいと考えています。
そのためにはまずページ数を増やそうかなと。
今回の卒業アルバムは40ページですが、次は60ページにしようかとも。ちょっと無茶かな(笑)。
載せる写真の数はもっと増やしたいですね。
撮影テクニックももっと勉強しようと思います。
― アルバムの良さって何でしょう?
パソコンやスマホでも写真を見返すことができる時代ですが、このようにしっかりアルバムをつくると、どっしり重みがあって、人生の重みと似ているような気がします。
普段は思い出さないようなシーンも、アルバムの中に切り取られていると、グッとくるというか、魂がゆさぶられるような感じでしょうか。
ネット慣れしていない世代の私にはあって当たり前の写真やアルバムですが、今の子どもたちにはそうではない様に感じています。
アルバム・写真から得られる感動はかけがえの無いものですから、無くしてはいけない文化のひとつですね。
― 佐藤校長先生にとってアルバムとは?
アルバムを見て思い出をふり返るときが、都度『最高の記念日』になるのではないかと考えています。
実は私、小学校の同窓会に毎年参加しているのですが、その度に皆で卒業アルバムを見るんですよ。
80歳になる恩師もいつも参加してくれます。いろんな話題で盛り上がりますよ。
「この時こんなこともあったよね」と、前回思い出せなかったことを誰かが発言する。
参加できなかった人に「今頃どうしているんだろう」と思いを馳せる。
隣のクラスの写真にまで話題が及ぶことも。
つながりを確認するラインとも言えるのかもしれません。
卒業アルバムをつくる仕事に携わって、あらためてアルバムというものの偉大さを感じています。
これを児童に伝えていける様に卒業アルバムづくりを頑張ります!
校長5年目、2015年度より河内小学校に着任。在職2年目。
昨年より手づくりの卒業アルバムづくりを引き継ぎアルバムづくりをはじめる。
卒業生・保護者の喜ぶ姿に感激し、もっと良いアルバムを作ろうと、現在は撮影テクニックの向上に奮闘中。
他に、校長として熱く取り組んでいることは…
・児童の体力向上:本校の重要課題です。
・運動場の整備:芝(フィールド)の管理と走路を走りやすくするための雑草採り。