今回はお掃除・片づけのプロとして、生前整理を発信している大津さんのもとへ行き、写真整理の大切さ、そしてアルバムが持つ役割をおうかがいしました。
人生を振り返り、これからをより良く生きるためには「マイ・ベストショットアルバムをつくること」が大切と言います。
1万件以上の家庭の現実を見てきた大津さんだからこそ気が付けた写真・アルバム整理の方法を紹介してもらいました。
―まず生前整理について教えてください。
昨今、メディアでよく耳にする「終活」と私たちの提案している「生前整理」は同じものではありません。
終活は人生の終わりを迎えるために行う活動のことを言い、生前整理は残りの人生をよりよく生きるために物・心・情報を整理することを指します。
25年間以上続けてきたお掃除や片づけの仕事を通して、1万件以上もの家庭を見てきましたが、写真が整理されていない家庭が多く、
その家庭のほとんどが段ボールいっぱいに入った写真を整理することができず、最終的には捨てる他ないという状況でした。
しかし、人生を記録した写真やアルバムを手放すのは、とても悲しいこと。
その悲しさを皆さんに味わってほしくないという想いから、生前整理の為のアルバムづくりの方法を考え始め、
「マイ・ベストショットアルバム」という形に辿り着きました。
―「マイ・ベストショットアルバム」について教えてください!
「マイ・ベストショットアルバム」とは名前の通り、人生の節目を表すベストショットだけを集めたアルバムです。
特別なテクニックは必要無く、写真を選ぶ、アルバムに貼り付ける、コメントを添える、3ステップで完成です。
それぞれポイントがありますので、早速紹介しましょう!
1.写真を30枚選ぶ
まずは写真の選定からです。私は30枚まで厳選することを提案しています。
30という数字は、これまでの現場やセミナーでの経験から導き出した、人が選びこめる数字の目安です。
いきなり30枚は難しいので、まず100枚を選びその中から50枚くらいまで減らします。そして、最終的に30枚までに絞り込んでいくのです。
ポイントは、2つ。まず風景だけの写真は省きます。
このアルバムの主人公は"あなた"ですので、自分自身が写っている写真を選びましょう。
もう1つ、思い出せない場所・人の写真も別で保管するか、思い切って捨ててしまいましょう。
最終的に、その写真を見て思い出がしっかり語れるかが重要です。
2.小さ目のアルバムに貼り付ける
アルバムと聞くと、大きくて重いアルバムをイメージする人が多いと思いますが、
マイ・ベストショットアルバムは持ち運びが出来る小さ目サイズにしましょう。
1ページにL判の写真が1枚貼れるくらいで十分です。
アルバムを小さくまとめることで、持ち運びしやすくなります。
一緒に思い出を共有したい人のところへ気軽に持って行くことができますし、
地震などの万が一の時も、この1冊だけでも運び出せれば思い出を守ることができます。
収納にも困らないので、家族の歴史としても子どもに引き継いでもらい易いというのも特徴です。
3.コメントを添える
写真を見て思い出を語れるか、を写真選びのポイントにしたのは、 このアルバムづくりではコメントを添えるために必要だからです。 アルバムを見直した時、そのコメントを読むことで、さまざまな記憶をよみがえらせることができます。 余裕があればシールやマスキングテープで飾ると楽しいですよ。
LESSON 「マイ・ベストショットアルバム」のつくりかた
●写真は30枚に厳選する
・その写真を見てしっかり思い出が語れるものを選ぶ
・風景だけの写真、知らない人・思い出せない人が映っているものはNG
・大量の写真から選ぶ時は「100枚→50枚→30枚」と徐々に絞り込んでいく
●持ち運びし易い小型のアルバムにまとめる
・1ページに1枚、時系列に並べる
・気軽に取りだして眺めたり、同窓会などに持ち出せる様に小さ目のアルバムにする
●写真にまつわる思い出をコメントにして残す
・いつ見返しても記憶を呼び起こせる様に写真とコメントをセットにして残す
・コメントを書く作業の中で、忘れていたことも思い出すことができる
―生前整理は高齢の方だけが行うものでしょうか?
そんなことはありません。生前整理は年齢に関係無く誰にでも必要なことだと考えています。
結婚や引っ越し、お子さんの成人や身近な人とのお別れなど、人生には大きな節目があります。
そのタイミングで一度立ち止まって、これまでの人生を振り返って整理することで、その後の生き方が大きく変わってきますよ。
とは言え、高齢の方には特に行って欲しいです。
仕事を退職したり、子どもが独立した時を「第二の人生のスタート」って言いますよね?
第二の人生を豊かに過ごす為に、まずは整理から行ってみてはどうでしょうか
ご両親が第二の人生に入っている方は「生前整理」でそのお手伝いをしてあげてください。
―大津さん自身も、お父様のアルバムをつくられたそうですね。
「マイ・ベストショットアルバム」を発信する時、親と一緒につくることをオススメしています。
親孝行をするためのヒントを与えてくれる良い機会になるからです。
仕事を通して数々の家庭を見てきた私の経験上、ひと家庭につき平均30冊のアルバムがあります。
その量を親だけでまとめるのはとても大変なこと。
一緒に写真を見ながら「これはいつの写真?」「これは何をしていたの?」と聞いていくと、写真を選定していく中で親がやり残したことが見えてくるはずです。
親の心残りを減らしていく協力できれば、生前整理のモットーである“よりよい生き方”が実現でき、最高の親孝行が叶うと思いませんか?
1年に1度は「マイ・ベストショットアルバム」を見直して、新しい思い出を一緒に追加して行きましょう。
―これから「マイ・ベストショットアルバム」をつくる人にメッセージをお願いします。
私は写真を整理するには“5つの力”が必要だと考えています。 それは「決断力」、「判断力」、「分別力」、「管理力」、そして「体力」です。 このうちの1つでも衰えてしまうと、アルバムづくりは難しくなります。 アルバムをつくるということは人生を振り返えるということ。 この5つの力を使って写真の価値を見出せるのは、そこに写る思い出を作った本人だけです。 1つの力が欠け、写真を捨てる選択しかなくなってしまった時の悲しさは計り知れません。 「あとで」ではなく、5つの力が研ぎ澄まされている「今」、アルバムづくりをしましょう。
―大津さんにとって、アルバムとは?
「人生そのもの」です。
写真を見るだけで、当時の思い出が立体的に蘇ってくることはありませんか?
旅行先で料理を食べている写真であれば、その時の風景はもちろん、食べた料理の味、話した内容など、たくさんの情報を思い出すことができます。
自分のストーリーが収められた1冊のアルバムは、自分が生きた証を残すための最高のツールです。
一般社団法人 生前整理普及協会代表理事。 アルバイトからおそうじ業界に入り、後に独立。おそうじ会社アクションパワーを立ち上げ、今では女性起業家支援にも力を入れている。 自らの経験とノウハウを広めるために講師業や出版、メディアへの出演など精力的に行っている。